ただ思った言葉を口にしたら
それは君へのメッセージでした。
「卒論どうすっかな~」
水谷はベットに倒れこむ。
卒論が終われば、・・・卒業か。もうこんなに経ってしまったんだ。
高校のころは楽だったなー
「水谷!」
と思い浮かぶのは栄口の顔。
・・・ってなんで栄口を思い出してんのオレ
高校の頃に付き合っていた栄口にはもうずっと会えていない。
大学に入って自然消滅。
でもオレはこの通り、未練たらたらってわけで、
最初の頃はメールも電話もしていたが、会えなくなるのは大きい。
今となってはメールすら送っていない。
「忘れてるだろうなぁ」
俺は忘れてないけどね
「・・・さーて卒論卒論!」
重い体を机に向けてシャーペンを持ち上げる。
・・・・やる気しねぇや
シャーペンをまた机に置き、財布と携帯だけ持って
この窮屈な世界から飛び出した。
「空は広いよなぁ」
ただ思った言葉を口に出す
意味は無い
「会いたいなぁ」
あの空に似ている人に
「へぇ?誰と?」
え、それは・・・・
・・・・・・・・は?
「こんにちは」
「・・・こんにちは?」
「ぶはっ、そのアホ面変わってねぇ!!」
「――えっえええ?!」
「栄・・・口?」
「ほかに誰がいるの」
「うん、そうなんだけど、」
まさかの4年ぶりの再開
こんなに簡単に会えるなんて、思っても無かった。
「久しぶり、水谷」
「久しぶり、栄口」
「元気にしてた?さっきたそがれてたけど」
「もっちろん!てか、え?!どうしたの?!」
「―えっ、バイト帰りでそしたら偶然」
にこ、と昔から変わらない笑顔
そう、この笑顔が見たかった。
「・・・近所?オレ、あそこのマンション」
公園の右にあるマンションを指差した。
「まじかよ、一緒じゃん」
・・・これって神様の贈り物か何かなんだろうか
いやいやいやいや、この偶然はあまりにも信じがたい。これは夢なのだろうか
ただの白昼夢だとしたらオレ、相当やばいんだろうな。
でもこれは、夢でもなんでもなくて
現実で、
でも何で気が付かなかったのか、昔のオレが憎い。
「偶然ってあるもんだねぇ
――全くだ。
よく会わなかったね!俺、ココに来て3年経つのに。」
「俺も大学入ってすぐにだよ!」
「まじかよ~・・・まぁ、ここでもなんだし・・・・家来る?」
栄口の家は、本当に俺と同じマンションだった。
そりゃ、5階建てだけど、会わなかったのは不自然なくらいだ。
「はい紅茶、」
「ありがと」
昔、栄口の家に遊びに行った時と同じ匂いがした。
「びっくりした~、え、何階?」
オレは5階だよ~あちっ、棚の上の野球部の写真に目が行って、手元が狂ってしまった
写真のオレ、若いな・・・・てか青い。
「そっか~だからかな?」
栄口の方は写真と見比べてみると、若干大人びて入るけれど、あまり変わってなくて
それがすごく嬉しかった。
「・・・・えーっと、何?」
「(あ、見てるの気がつかれてた)変わってないなぁ~って」
「まぁ4年だからね」
「それでも4年は長いよ」
栄口にあえないこの4年間はすごく長く感じた。
恋人っぽい人は何人かいたけど、心には栄口しかいなくて「他に好きな人がいるんでしょ」って別れたのが何回も続いた。
どうして女の子はそう言う事に敏感なんだろう
「・・・別れたりしたの?」
「え?」
「今の、口に出してたよ?」
「ええぇぇえ!うそ!(ど、どこから?!)」
「どうして女の子は~・・・って」
「あ、あぁ・・・(栄口のことは口に出してないのか)」
――ほ、
「彼女いるの?」
「ううん、いなーい」
栄口のおかげで別れちゃった!とまでは言わないけどね
「そっか、」
・・・?
何その、・・・安心した顔。・・・いや、気のせいだろう。だって昔じゃないんだから・・・
「あ、そろそろ帰るよ、卒論やばいんだよね!」
「あ、うん。おくってくよ」
玄関のドアノブに手をかけ、回すと明るい空が見えた。これでおしまいになるんだろうな
・・・でも
これだけは聞かせて 欲張りなオレの最後のお願い
「ねぇ、」
「ん?」
「今からでも遅くないかな」
「何が?」
「もう一度、好きって言ったら・・・」
---バタン
出るはずのドアが閉められた
栄口の、手によって
「・・・待って
俺も、少しだけ言いたい事がある」
「・・・・・・聞くよ」
「俺知ってたよ。
水谷がここの5階に住んでる事も、いつもあの公園に行く事も、全部
・・・全部知ってたよ。」
「じゃあどうして」
「隣に女の子がいたから 彼女が居るから行けなかったんだ!
オレはもう要らないんだって、でも、オレは離れたくなくて
今日、1人だったから、最後って決めて話し掛けた。そしたらお前・・・なんだよそれ」
栄口が座り込んでる姿を見て、オレがどんなにバカだったかを思い知った。
この子は一人でオレの姿をずっと見続けていてくれたのだから
ねぇ栄口、もう1度 オレに告白をする勇気をくれませんか。
次はこんなふうにはならないから