「俺ね、涙が枯れちゃったの」
「・・・へ?」
栄口と屋上で二人のんびり話をしていた
すると、栄口が突拍子もないことを言い出した
涙が・・・枯れた?
「涙が、枯れた・・・って?」
「そのまんまの意味だよ、涙がね悲しくても出てこないんだ」
すくっとその場に立ち、こつこつと後ろに手を組み、下を向きながら歩き始める栄口
その表情は見えない
見えないんだけど、どことなく・・・
その背中は辛そうにしか見えないんだ
・・・なんでだろう?
「なんで涙が枯れちゃったの?」
「・・・昔ねー」
そう言って、栄口は昔の自分の話をし始めた
「昔ね、だぁいすきなお母さんが死んじゃったんだ」
「え…?」
「死ぬ前の日も、お母さんと一緒に大好きな絵本を読んでてさ、その時に・・・」
『おかあさん、おかあさん』
『なぁに、勇人?』
『おかあさん、ずーっといっしょだからね?』
『ふふ、はいはい、ずーぅっと一緒ですよー』
「そう言ってたのに、母さんは次の日に…事故で死んだんだ」
栄口の顔は無表情に近かった
それでも、悲痛な顔は決して消えない
「その葬儀…かな、そこで俺は…泣かなかったんだ」
「・・・・・」
「泣けない、そう思った。だって、姉さんや弟だって泣いてるんだ、ここで俺が泣いたらもっと母さん悲しむんだ・・・そう思った」
「だから、泣かないようになったの?」
「うん、でもね、一人で泣いたの、そしたらね、悲しくても泣けなくなっちゃった」
「そう、なんだ・・・」
「でもね…」
後ろを向いていた栄口がふいっとこちらを振り向く
栄口の頬には
涙が流れていた
「なんで・・・・・泣いているの?」
「わかんないよ…」
「雨も降ってないよ?」
「うん、知ってるよ」
カツコツ カツコツ
栄口にゆっくり近づき、優しく優しく抱きしめた
「なんで?ねぇ、なんで・・・」
「なんで、栄口は泣いているの?」
「・・・・・・わから、ないよ」
ぎゅうっと、俺の背中にある手でシャツを掴む
俺の方に涙が染み込む
「栄口、こっち向いて?」
「・・・?」
くいっと栄口の顎を掴み、上を向かせ、そのままキスを瞼に落とす
栄口の目は大きく見開く
「別に、泣いたっていいんだよ、理由なんてなくたって」
泣くことだって立派な感情の表現の仕方だよ?と、笑いかけながら栄口に言う
すると、栄口は真赤になって俺の肩にまた顔をくっつけてしまった
・・・真っ赤になった栄口可愛かった
そう思ってしまう俺はすごくKYだと思う
俺の肩で栄口はごにょごにょ言おうとしていた
「・・・の所為だ」
「え、なーに?」
栄口はがばっと俺の顔に自分の顔を近づけ、俺をきっと睨む
「こんなに泣き虫になったのは、お前の所為だ、馬鹿・・・!」
「・・・ぷっ、なんだよ、それ」
「うっさいよ、お前っ」
「知ってる」
「でも・・・・・・あんがと」
「ん・・・」
俺の所為で、君の感情がまた蘇ったのならば、何度でも俺の所為にしていいよ
それほど君のことを俺は愛しているから―――――
こんなに泣き虫になったの あなたの所為よ
(栄口、大好き)(…俺もだよ)((・・・・・・・栄口が素直だー!!))
あとがき
・・・お母様の死因を勝手に事故にしてごめんなさぁぁぁぁぁぁぁあああいい!!!
ごめんなさい、絵本のシーンを入れたかっただけで、ごめんなさいorz
ちょっと短めにしてみました、すっごい楽しかったです!!栄口を泣かせたかったです!!←